第55回日本未熟児新生児学会・学術集会を標記の日程・会場で開催させていただきます。このことは、当病院小児科にとりまして極めて光栄なことと存じます。大阪には全国に誇るNMCS(新生児診療相互援助システム)がありますので、当院の力不足はNMCSの仲間に応援を頼み、会員の皆様に喜んでいただける企画・プログラム案など心を込めて準備を進めているところです。
今回の学術集会のメインテーマは、「いのちの輝きを支える−Baby-first, Child-firstの社会を目指して」としました。このテーマの土台になっているのは、ロビン・カー=モース、メレディス・S・ワイリー著「育児室からの亡霊(ゴースト)」(朝野富三、庄司修也監訳、毎日新聞社、2000年)です。この本は一種の預言書で、レイチェル・カーソンが「沈黙の春」で地球の自然環境汚染の問題を取り上げ地球の滅亡を警告した様に、ゆりかごの汚染を防ぎ本当に子どもを大切にするBaby-first, Child-firstの社会にしなければ、国自体が内部から崩壊することを警告しています。同時に著者らは、現実に米国では大学に行く若者の数くらい、刑務所に入る若者が増加し、今や刑務所は成長産業の一つに入っているとの恐ろしい現実を指摘しています。今回主題講演「育児室からの亡霊−Baby-first, Child-firstの社会を目指して」を、この本の訳者の一人であります朝野富三教授(宝塚造形大学、将来宝塚大学)にお願いしました。
一方医療崩壊、とくに周産期医療の崩壊が叫ばれる中、周産期医療の再構築と再生と同時に、医療の質の向上が大きな課題となっています。特別講演として、今までタブーとされていた勤務医の労働環境問題を舛添前厚生労働大臣に直接国会で質問した梅村聡氏(参議院議員)に「パンドラの箱を開けよう」、厚生労働省主任研究者の藤村正哲先生(大阪府立母子保健総合医療センター総長)に「新生児集中治療の質と評価を考える:標準化、ベンチマーク」を行っていただきます。今後周産期医療の目指す未来像を示していただけると期待しています。また外国からの招待講演として、例年通り韓国からの招待以外に、生命倫理、黄疸管理、脳保護戦略など最近のトッピクスについてオーストラリア・モナシュ大学Victor Yu名誉教授(「Ethical and medical decision making and compassionate care in NICU」)、米国スタンフォード大学Charles E. Alfhors教授(「Unbound bilirubin: Improving the paradigm for evaluating neonatal jaundice」)、ワイル・コーネル大学 Jeffrey M. Perlman教授(「Neuroprotective Strategies to Prevent Perinatal Hypoxic Ischemic Brain Injury in Term Infants」)をお願いして承諾をいただいています。またPerlman教授には、新しく改訂になった新生児蘇生プログラム(NCPR2010)についてもお昼の教育セミナーで解説いただく予定です。
今回目玉となるトッピクスとして「iPS細胞と神経再生医療」「乳幼児の虐待と脳科学」「NICUからの在宅支援」「グリーフケア」「臨床に役立つ基礎研究−大学からのメッセージ」、若い医師のための「新生児学基礎教育セミナー」「Meet the Professors」など教育講演、シンポジウム、特別演題、若い医師が新生児学の基礎を学んだり、外国の有名教授と直接会って会話する機会などを企画しています。その他会員の皆様の現場に直接役立つ魅力的なテーマをNMCSの実行委員で考えています。皆様からの要望や取り上げたいテーマがありましたら、是非遠慮なく事務局までお知らせ下さい。同時に多くの演題を提出していただき、学術集会を皆様のご協力によって盛り上げていただけましたら幸いです。そして何より多くの方々が積極的に参加して下さり、討論に加わって下さることを心から期待しています。
最後に第55回日本未熟児新生児学会のシンボルマークについて紹介します。一つはNMCSのシンボルマーク「ツネオくん」と当院小児科のマークである「ペディちゃん」です。ツネオ君はエバラこどもクリニックの江原伯陽先生の作で、新生児搬送の情報センターを象徴し、「たった一人の情報センター」を初期に担当して下さった鶴原常雄先生の名前からとっています。一方ペディちゃんは元当院の研修医であった宣保(徳広)美紀先生の作で、NICUに入院した新生児が元気で退院し未来に飛び立つ姿を象徴しています。どうか手作りのシンボルマークを可愛がっていただきたいと願います。関係者一同、神戸の地で皆様にお会いできること心から楽しみにして、今後も精力的に準備を進めて参ります所存ですので、皆様のご支援を宜しくお願いいたします。
第55回日本未熟児新生児学会・学術集会
会長 船戸正久
(淀川キリスト教病院 副院長)